遍界不曾蔵(へんかいかつてかくさず)
禅の中にある言葉で、とても深い言葉です。
遍界とは、全宇宙のことをさし、不曾蔵は隠していないという意味です。
この禅語は、全宇宙、つまり「世の中は何も隠してはいない」という意味になります。
世の中に存在するもの全て、太陽も、月も、川も、山も、全てあるがままの状態で存在しており、そこに何も隠し事など存在しません。
世の中で起こることも全て、真実は本来、隠れてはいないのです。
真実が見えなくなってしまっているのは、あらゆるものにとらわれてしまった私たちの心に原因があり、本来の真実が見えなくなってしまうのです。
世の中は非常にシンプルであるにも関わらず、私たち人間一人一人のこだわりや偏った心が複雑に絡み合い、相手を疑ったり、物事を信用できなくなったりと、本質を見失ってしまうのです。
何が正しくて、何が正しくないのか?自分の偏りやこだわりで曇ってしまった心を晴らすことができれば、自然と真実は見えるようになっていきます。
他人の話だけを鵜呑みにせず、自分で、物事の本質を見て、感じて、見極める必要があります。
他人から聞いた話だけで、人や物のイメージを変えてしまった経験はありませんか?
「あの人は冷たい人」と聞けばあの人は冷たい人なんだといった認識をしてしまう。
これも偏りが原因です。真実を見失ってしまったがゆえに起こる現象です。
本人に会って話をしたわけでもなく、本人のことを何も知っているわけでもない。ただそう人に聞いただけ。
ある時本人と関わる機会があり話をしてみたところ、聞いていた人と、自分がイメージしていた人とは全然違った。
よくある話ですが、その人は今まで真実が見えていなかったということが、良くわかると思います。
何ごとにもとらわれず、物事を見ることができれば、真実など簡単に見えてくるもの。
そこに疑いや、余計な憶測などを持ってしまうから、分からなくなる。
「遍界不曾蔵」全てはあるがままであり、そこに何も隠し事はない。
もっとシンプルに、自分が感じたままを信じていけば、これから先、真実を見失うことはなくなるでしょう。